大学生のメンタルヘルス危機

大学生活は自由で楽しい時間であると同時に、大きなストレスにさらされる時期でもあります。学業のプレッシャー、就職活動、人間関係の変化、経済的な不安。特に試験期間は、ストレスが一気に高まるタイミングです。

イギリスの大学生を対象とした調査では、約3分の1の学生が臨床的に問題のあるレベルのストレスを抱えていると報告されています。しかし、大学のカウンセリングサービスはどこも予約がいっぱいで、支援を受けられない学生が多数います。

では、大規模に展開できるストレス予防プログラムはないのか。Galante et al. (2018) は、616人の大学生を対象とした大規模RCTで、マインドフルネスがその答えになり得ることを示しました。

エビデンスレベル:大規模RCT(The Lancet Public Health 掲載) | 616名・実用的臨床試験

研究の概要

この研究はケンブリッジ大学で実施された実用的ランダム化比較試験です。「実用的」とは、理想的な実験室環境ではなく、現実の大学環境で行われたことを意味します。

この研究の画期的な点は、616名という大規模な参加者数と、最もストレスの高い試験期間での効果を検証した点にあります。

Key Finding

マインドフルネスプログラムを受けた学生は、試験期間中のストレスが対照群と比較して有意に低く(効果量 0.44)、精神的苦痛が軽減されていた。最もストレスの高い時期に、最も大きな効果を発揮したのです。

結果の詳細

試験期間のストレスが激減

最も重要な発見は、マインドフルネス群のストレスレベルが試験期間中に最も大きく改善していたことです。効果量は0.44で、中程度の効果に分類されます。

これは直感的にも納得できる結果です。ストレスが低い平常時には、マインドフルネスの恩恵は目立ちにくい。しかし、ストレスが高まる試験期間になると、トレーニングで身につけた「ストレスとの付き合い方」が真価を発揮するのです。

精神的苦痛の軽減

うつ症状や不安症状を含む精神的苦痛の指標も有意に改善されました。特に、試験前から精神的苦痛のリスクが高かった学生ほど、大きな効果が見られました。

ウェルビーイングの向上

ストレスの軽減だけでなく、ポジティブなウェルビーイング(幸福感、充実感)も有意に向上しました。瞑想は「ネガティブを減らす」だけでなく、「ポジティブを増やす」両方向の効果を持つことが確認されたのです。

なぜこの研究が画期的なのか

これまでにも大学生を対象とした瞑想研究はありましたが、この研究は以下の点で卓越しています。

マインドフルネスは「ストレスをゼロにする」魔法ではない。しかし、ストレスの高い状況に直面したとき、それに圧倒されずに対処する力――レジリエンス(回復力)――を育てる。それこそが、この研究が示した瞑想の真の価値である。

MSSプログラムの特徴

この研究で使用されたMSS(Mindfulness Skills for Students)プログラムは、大学生向けに特別に設計されたものです。

あなたの毎日に活かすには

学生でなくても、この研究の知見は日常に活かせます。ストレスの高い場面で瞑想の効果を最大限に発揮するためのポイントです。

ストレスは避けられません。しかし、ストレスに潰されるか、それとも乗り越えるか。瞑想は、その違いを生む力を科学的に実証されたかたちで提供してくれます。

参考論文
A mindfulness-based intervention to increase resilience to stress in university students (the Mindful Student Study): a pragmatic randomised controlled trial
Galante J, Dufour G, Vainre M, et al.
The Lancet Public Health, 2018;3(2):e72-e81
DOI: 10.1016/S2468-2667(17)30231-1